メルボルン(オーストラリア)|2024年3月5日
Telix Pharmaceuticals Limited (ASX: TLX、テリックス)は本日、放射性同位元素生産技術企業であるARTMS社(以下ARTMS社)、同社の先進サイクロトロン加速器を利用した放射性同位元素生産プラットフォーム、製造プラント、消耗品ターゲット生産に必要な超高純度レアメタルの備蓄を買収する契約の締結を発表しました。
カナダのブリティッシュ・コロンビア州バーナビーに本社を置くARTMS社は、サイクロトロン(量子加速器)で生成される放射性同位元素の物理学、化学、材料科学の専門性を有する株式非公開のベンチャー企業です。国際的に有名なカナダの量子加速器センターであるTRIUMFからのスピンアウト企業であるARTMSは商業段階の企業で、その技術は様々な医療用放射性同位元素の生産を最適化するために、主要な製造ネットワークによって使用されています。
ARTMS社の買収により、弊社の各種診断用アイソトープをより高度に管理し、安全性を確保することで、テリックスのサプライチェーンと製造の垂直統合がさらに強化されるものと期待されます。
ARTMS社のコア技術プラットフォームはQUANTM Irradiation System™(QIS™)に基づいており、これは完全なサイクロトロンを利用した放射性同位元素の生産システムで、ジルコニウム-89(89Zr)、ガリウム-68(68Ga)、テクネチウム-99m(99mTc)および銅-64(64Cu)を含む商業的に重要な医療用アイソトープの高効率でコスト効率の高い生産をサポートするように設計されています。
QIS™は業界をリードする生産収率を実証しており、それを支える独自の知的財産とターゲット製造プロセスによって、従来のサイクロトロンとターゲット(核反応容器)を用いる製造システムを大幅に凌駕しています。さらに、ARTMSの先進サイクロトロン技術のポートフォリオは、アクチニウム-225(225Ac)およびアスタチン-211(211At)を含み、将来的には商業的に重要なアルファ線放出治療用放射性同位元素の製造に直ちに適用され、差別化されると期待されます。
買収の戦略的根拠は、4つの主要分野におけるARTMSとテリックスの商業的相乗効果に由来しています:
- 1. Zircaix™1(TLX250-CDx)の腎臓がんイメージング展開のサポート
テリックスは現在、QISシステムと厳選された薬剤製造パートナーを使用して、米国で89Zrの大規模生産を行う複数の生産拠点の検証を行っています。ARTMSのQIS™は、イットリウム-89(89Y)ターゲットに放射線を照射し、放射性医薬品として使用可能な無菌、濾過、精製、溶液化された89Zrを製造することで、生産能力とサプライチェーンの信頼性を高める重要な装置です。ARTMSは、この商業的応用をサポートするのに十分なサイクロトロン加速器利用のための固体89Yターゲットを製造するために、超高純度の89Yを大量にストックしています。
- 2. Illuccix®のライフサイクル管理をサポートするための68Gaの超大量生産
Illuccix®はすでに、サイクロトロンで生産された68Gaの限定的な使用をサポートしています。ARTMSとテリックスは2020年2からIlluccix®のより高い放射活性であるキュリースケール(Ci)生産の可能性を評価するために協働してきました。今回の買収の目標の一つは、テリックスがIlluccix®のマージンをさらに改善し、テリックス独自の薬剤パートナーシップモデルを通じてより幅広い流通を実現できるようにすることです。ARTMSは商業的に重要な68Gaの製造原料である亜鉛-68(68Zn)の備蓄をしています。
- 3. 64Cuや99mTcなど、商業的に有用なサイクロトロンで製造される診断用放射性核種のサプライチェーンの信頼性向上
テリックスは買収完了後、これらの放射性同位元素の信頼性と日常的な生産を強化するために、選択された薬剤ネットワークおよび戦略的パートナーと協働する予定です。特に64Cuについては、現在米国内に商業的に実行可能な生産ネットワークが存在しませんが、ARTMSは64Cu生産に不可欠な原料である相当量のニッケル-64(64Ni)の商業的備蓄を持っていますが、これは世界的に供給が著しく制限されています。
- 4. 治療用放射性核種の安全かつ高収率生産を支援する「次世代」サイクロトロンターゲットの開発
これには225Acや211Atなどのアルファ線放出核種が含まれます。この研究開発活動は、ベルギーのテリックス・マニュファクチャリング・ソリューションズ(TMS)にあるテリックスの最先端の研究用サイクロトロン設備と高度に連携しています。テリックスは2024年末までに225Acの臨床試験量を社内で生産する計画であり、ARTMSの研究開発拠点をTMSの高エネルギーサイクロトロン拡張計画と整合させる予定です。
買収の一環として、テリックスはBC州バーナビー(カナダ)にあるARTMSの生産施設とクリーンルーム利用の恩恵にあずかります。テリックスは適用される法律および取引条件に従い、バーナビーにあるARTMSの研究開発および生産能力を引き続き運営・拡大し、社内および顧客のニーズをサポートする予定です。
この買収は財務的増収の可能性があり、Illuccix®とZircaix™の売上総利益率にプラスの影響を与えます。
テリックスのマネージング・ディレクター兼グループCEOであるクリスチャン・ベーレンブルッフ博士は「ARTMSは、サイクロトロンをベースとした『次世代』アイソトープ製造システムの分野で先駆的な存在であり、同等のシステムを凌駕する生産効率と収率を実証してきました。この強力な技術を医薬品開発と密接に連携させることで、診断用および治療用の放射性医薬品のコスト、市場アクセス、有用性を変革することができると期待しています。サイクロトロンや加速器を利用した放射性同位元素製造は、商業的に重要なアイソトープの生産能力を大幅に向上させ、コストを下げる可能性を秘めており、原子炉を利用した製造の重要な補助的役割を果たします。我々は実りある協力関係をより深いパートナーシップへと拡大できることを嬉しく思います。」と述べています。
ARTMSの最高経営責任者であるダグ・ジェンティルコアは、「我々の目標は常に、重要なアイソトープを最も必要とする人々にオンデマンドで確実に供給することであり、テリックスと手を組むことはこの希望を実現する理想的な方法です。Illuccix®によりテリックスは米国市場で最も使用されている68Gaベースのイメージング薬剤を手中に入れ、さらに89Zrベースの後続製品候補であるZircaix™も手中に入れました。弊社の長期的な目標は治療用放射性核種であり、テリックスとともに、同社の広範な後期製品パイプラインを含め、商業規模でこれらを提供できる可能性があると確信しています。」と述べています。
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